間仕切変更に伴う非常照明の改修工事

施工事例2025.07.16

オフィスの機能性や生産性を向上させるためのレイアウト変更は、多くの企業で定期的に行われます。しかし、壁を一枚新設するだけでも、消防法上の義務が新たに発生することをご存知でしょうか。今回は、会議室増設のための間仕切り変更に伴い、消防法で定められた安全基準を満たすための「非常照明」の改修工事を行った事例をご紹介します。従業員の安全を守り、法令を遵守するための重要な工事の裏側を、ぜひご覧ください。

工事概要:間仕切り壁で生まれた「法的な暗がり」を解消

お客様からのご相談内容

今回ご依頼いただいたのは、東京都内のオフィスビルに入居されている企業様です。事業拡大に伴い、広い執務スペースの一部に新たに壁を設置し、複数の会議室を増設する計画でした。 お客様からは、以下のご相談をいただきました。

  • 内装業者から「間仕切りを新設すると、消防設備の追加工事が必要になるかもしれない」と指摘された。
  • 新しい通路や会議室が、停電時に真っ暗にならないか心配。
  • どのような工事が必要で、費用はどれくらいかかるのか知りたい。
  • 工事に伴う消防署への届出も、専門家として代行してほしい。

レイアウト変更によって新しい部屋や廊下ができると、既存の非常照明の光が届かなくなり、消防法が定める「床面での照度」を確保できなくなる可能性があります。これを放置すると、万が一の停電時に避難が困難になるだけでなく、消防法違反として是正指導の対象となります。

具体的な工事内容

お客様の不安を解消し、安全なオフィス環境を実現するため、以下の手順で工事を進めました。

  1. 現地調査と設計 新しいオフィスレイアウトの図面を基に、現地で既存の設備状況を確認。どこに非常照明を増設すれば、法令基準である「床面で1ルクス以上の照度」を確保できるか、専用のソフトで照度計算を行いました。その結果、新設された通路と各会議室内に、計5台の非常照明を増設する必要があることが判明しました。
  2. 施工内容の詳細 具体的な作業内容は以下の通りです。
    • 既存設備の確認:分電盤の非常電源回路に空きがあるかを確認。
    • 新規配線工事:分電盤から増設場所まで、天井裏に新しい配線を通します。
    • 器具の取り付け:天井や壁に穴を開け、LED非常照明器具を設置・固定します。
    • 結線・点灯試験:配線を器具と接続し、実際に停電状態を模擬して正常に点灯するか、規定の明るさを保てるかを確認しました。

使用した主な機材と専門用語解説

今回の工事で使用した機材や、関連する専門用語についてまとめました。

項目内容補足情報
使用機材LED非常用照明器具(天井埋込型/壁直付型)従来の蛍光灯タイプに比べ、長寿命・省電力で、より明るいのが特徴です。
使用機材照度計光の明るさを測定する専門機器。工事完了後、床面の照度が基準を満たしているかを確認します。
専門用語非常照明(非常用の照明装置)停電時に自動で点灯する照明設備。建築基準法で設置が義務付けられています。火災や地震などで商用電源が断たれた際、中にいる人々が安全に避難するための「命の光」です。
専門用語照度(ルクス:lx)光に照らされた面の明るさの度合いを示す単位。消防法では、非常照明が点灯した際の床面での水平面照度が、1ルクス(蛍光灯等の場合は2ルクス)以上必要と定められています。
専門用語着工届・設置届消防設備の工事を行う際に、消防署へ提出が義務付けられている書類です。着工前に「これから工事をします(着工届)」、完了後に「工事が完了し、基準通りに設置しました(設置届)」と報告します。

工事で直面した課題と、それを乗り越えたプロの工夫

天井裏の「見えない障害物」との戦い

工事で最も辛かったのは、天井裏での配線作業でした。図面上では何もない空間に見えても、実際に点検口から中を覗くと、太い空調ダクトや建物の梁(はり)が縦横無尽に走っており、予定していた配線ルートが物理的に通れないという事態に直面しました。

また、今回はお客様が業務を続けている中での「居ながら工事」でした。そのため、ドリルの音や作業音を極力抑えることはもちろん、OA機器や書類が並ぶオフィス内で粉塵を一切出さないよう、細心の注意を払う必要がありました。限られた点検口から狭い天井裏に体をねじ込み、ホコリを立てないように慎重に作業を進めるのは、精神的にも肉体的にも非常に骨の折れる作業でした。

お客様の業務を止めないための柔軟な対応

これらの課題に対し、私たちはプロとして以下の対応を行いました。 まず、配線ルートについては現場で即座に代替案を複数検討し、一部を壁際に露出させる「配線モール」での施工に切り替えるなど、お客様に状況を説明し、ご納得いただいた上で最適な方法を選択しました。

騒音と粉塵対策としては、お客様の昼休みや会議の時間帯を狙って音の出る作業を集中させるなど、工程を柔軟に調整。また、作業エリアは養生シートで完全に隔離し、集塵機能付きの工具を使用することで、オフィス環境への影響を最小限に抑えることに成功しました。

工事後の改善点とお客様からの喜びの声

法令遵守と、それ以上の「安心」という価値

今回の工事により、以下の点が改善されました。

  • 安全性の飛躍的な向上:新設された通路や会議室の隅々まで非常時の明るさが確保され、万が一の停電時でも、従業員の誰もが落ち着いて安全に避難できる環境が整いました。
  • コンプライアンスの確保:消防法に完全に適合したオフィスとなり、企業の社会的責任を果たす上で重要なコンプライアンス体制が強化されました。
  • 美観と省エネの両立:増設した器具は全て薄型のLEDタイプを採用したため、オフィスの美観を損なうことなく、消費電力の削減にも貢献できました。

何よりも、従業員の皆様が「自分たちの職場は安全だ」と感じられるようになったことが最大の成果だと考えています。

工事完了後、お客様からは「素人では全く気づかない消防法のリスクを専門家の視点から指摘してもらえ、本当にお願いして良かった」「日中の工事でしたが、業務への配慮が素晴らしく、全く支障がありませんでした。面倒な消防署への手続きも全て代行していただき、心から感謝しています」という、大変嬉しいお言葉をいただくことができました。

まとめ:オフィスの変化には、消防設備のプロの視点を

オフィスのレイアウト変更は、見た目のデザインや機能性だけでなく、そこで働く人々の「安全」を確保する視点が不可欠です。間仕切り壁一枚の増設が、思わぬ法令違反や安全上のリスクに繋がることも少なくありません。

計画の初期段階でご相談いただければ、内装工事と連携してよりスムーズでコストを抑えた施工が可能になります。オフィスの変更を検討される際は、ぜひ私たち消防設備の専門家にお声がけください。皆様の職場に、法令以上の「安心」をお届けすることをお約束します。

設置中

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